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博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話

人気ランキング : 157,619位
定価 : ¥ 1,890
販売元 : 早川書房
発売日 : 1999-04

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¥ 1,890 博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話
辞書作りで分かる各国事情

 これは外国語に関心のあるひとは必読の本だとおもう。さまざまな言語の代表的な辞書はそれだけで編集哲学があるんだけど、
フランス語の場合→アカデミー会員という一部エリートによる中央集権
ドイツ語の場合→グリム兄弟が二人でこつこつ築いた職人技(だから死ぬまでに完成しなかった! 涙!)
 だとすると英語の場合はどうだったか。ちょっとボクには意外なんだけど、オックスフォード・イングリッシュ・ディクショナリー、通称OEDは完全に民主的なやりかたで編集されていた。ある単語のもっとも古い用例が分からなかったとすると、あらかじめ名乗り出ていたヴォランティア会員に調査依頼が出され、世界各地から情報が寄せられるというシステムである。なんか英語というとすぐ帝国主義に結び付けられるけど、こういう側面もあったという事実は知っておいたほうがいい。さらに驚くべきことに、これらの常連会員には若いときに感染した梅毒による妄想のため、あやまって殺人を犯してしまい、最後には自分のペニスを切り落とした「博士」がいた。かれの日頃の苦労に報いようとお礼を言いに編集主任が訪れた先は、だから本人もビックリの精神病院だった・・・。
 だから日頃は引くのが面倒で無味乾燥してると思ってる辞書も、かなり人間臭い物語りがいっぱい詰まってるんだね。

70年!

膨大な閲読者から膨大な古典の用例を集め、そこからリストを整理し、1語1語の定義と意味と使用された年代をまとめ上げていく。ワープロやコンピュータがない時代に、こんな呆れるほど骨の折れる作業の積み重ねが70年も続いてやっと完成した辞書OED。おそらく主人公の他にも何人もの狂人・変人がいて、彼らの超人的な集中力と持久力が、この辞書を生み出したのではないか、という気がする。

大事典版プロジェクトX

ぼくが通った高校の図書室にもしかしたら「オックスフォード英語大事典(略してOED)」があったかも知れない。OEDは、とにかくとんでもなくすごい辞書界の万里の長城だということは雑学的知識としてあった。篤志家を募って12世紀頃から18世紀までの間に出版された全ての英語で書かれた本を網羅し、そこから単語をリストアップして、さらに単語の意味を説明する際に有用な例文も拾い出していく。そして篤志家から送られて来る天文学的な数量の単語シートを元に編纂作業を進めていくのだ。読んでいるだけで気が遠くなる。第1版完成までに70年の月日を費やしたウルトラプロジェクトXだったのである。この辞書作りの裏側には数奇な運命に囚われた人物が貴重な役割を担っていたことが本書を読むとわかる。久しぶりに仰天本に出くわした。

新しくて古いオープンソース

OED(オックスフォード英語辞典)の編集にともなう話。まずびっくりするよねぇ、ここれらの辞書が出来る前、シェークスピアは辞書なしで作品を書いたんだよ。辞書なしだよ、まったく。そしてこの辞書の作成もありとあらゆる用例を集めることで作成されていて、その集める部分がオープンソース的な開発手法なわけ。つまり文中の説明を借りれば、
「この計画に着手するには、一人の力では足りない、とトレンチは言った。英語のあらゆる文献を丹念に読み、ロンドンとニューヨークの新聞にくまなく目を通し、雑誌や定期刊行物のうち文学的なものを綿密に調べるためには、「多くの人びとの協力」が必要だ。そのためにはチームをつくらなければならない。何百人もの人びとで構成される巨大なチームをつくりアマチュアの人たちに「篤志協力者として」無給で仕事をしてもらわなければならない、とトレンチは述べた。
というわけ、本ではその作業に参加した一人に焦点があたっていく。
はじめたきっかけは不幸な人生における社会への参加意識みたいなことが挙げられているが、逆にやめるきっかけも興味深いものだ。30年にわたって精力的に続けられてきた辞書への貢献が、死以外の何によって止むのだろうか。金銭が絡んでたりすると意外と簡単に崩壊するつながりだったりするが、まったくそういうわけでもないし。結論からいうと平凡だけど、複合条件で加齢による体調(精神状態もふくむ)の悪化、管理者の変更による管理体制の強化、何人かの知己の死亡なんかになるのかな。何にでも終わりはあるものだけど、30年にあまる貢献は十分すぎるもので、かつ後世にとっても幸福な貢献だったと思う。

A story behind the OED

Nothing tells us the magnificence of words more eloquently than the 12 volumes of the OED. The dictionary requests its users to confront to the historical accumulation of human knowledge and ideas. Now, after reading this book, I have come to see this linguistic monument from a different point of view. It describes how an American doctor, who joined Civil War, lost his insanity and committed a murder. As I read on, I found myself walking on a bridge scarcely balanced by the hospitality from the people around him and his dedication to the making of the OED. As a lexicophilia, I am very blissful to finish this book.

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